109号　2024年　春号の詩

 タイムマシンレスタイムトラベル

以上のように
この旅行プランは
タイムマシンの要らない
タイムトラベルです

日光江戸村で
二百年前の日本を散策し

東武ワールドスクウェアで
現在の世界を一周し

イチエフ周辺で二百年後の
住めない地球を体験します

科学技術の振れ幅を
観光バスに乗るだけで体験できます

 差別と区別と特別と

それは差別だ
まてよ区別だ
ちがう特別だ

私はどこでも嫌われて
居場所が無かったから
ここでもそうならないように
頑張っていたら
何でもできて
解決していくことに
嫉妬されていると告げられた

「大した差がないから嫉妬される
　差別を区別と思って生きるか
　圧倒的な差をつけて
　特別になるかだね
　嫉妬は期待の裏返しだよ」

だから差別だ
ならば区別だ
さらに特別だ

 睡眠負債

人間は８時間の睡眠が理想で
６時間以下の睡眠を２週間続けると
徹夜明けぐらいに能率が下がるという
これを睡眠負債と言う

だから毎日２時間残業分を
寝る時間にすることで
睡眠負債が減って能率が上がり
毎日定時で帰ることができる

だけど残業代は帰宅してからの
楽しみの元手となっているから
毎日２時間の楽しみを続けるには
家計に負債が生じる

睡眠負債で家計を賄う仕組みだが
それを直そうとしないのは
２時間分を睡眠ではなく楽しみに回して
４時間楽しんでしまい
睡眠負債は減らない恐れがある
それが負債を抱える真のメカニズム

 ゴーストメール

五十四歳で友人女性が亡くなった
新型コロナの影響で
家族葬で済ませ香典も郵送した
最期の別れをしたいから
四十九日を迎える前に
もう一度会いたいと思っていたら
昨晩夢枕に立った

バス停の前で
旧友と三人でバスを待っていると
彼女が歩いて来たのだ
全員オートバイ乗りだったのに
なぜバスなのかは解らない
しかも全員二十代後半の姿だ
「待ってたよ
　死んでるのに元気そうだな？」
「うん、大丈夫、歩けた」
「あれ、透明じゃないんだ影があるよ」
「うん、ちゃんとしてるよ
　ほら、腕触ってみて」
「おお、肉体だ生きてるみたい」
「やだぁ、もう、死んでるしぃ」
「やっぱりそうなのか
　そうだ、写真撮ろう写真
　最後の記念写真」

スマホのインカメラで撮影
「ギリギリ全員入った写ってる　
　みんなに送っておくわ」
「あたしにも送ってＧメールに」
「届くのか？」
「うん、四十九日まではね」

バスに彼女だけ乗らなかった

 不透明人間

見透かされたら透明人間
無視されたら透明人間
割り込まれたら透明人間

幼い時の夢
透明人間になりたいは
そんな形でかなうのだ

透明であろうとするほど
不透明な目に遭うから
少し濁ったほうがいい

そう言われて
少し濁ったつもりだが
今度は器用に避けられる

 宇宙冷戦

宇宙探査機は時速70万kmで飛べるが
それでも光の速さの１万分の１だ
１光年先に行こうとすると１万年かかる
地球に１番近い恒星でさえ４万年
最も明るいシリウスは８万年だ
宇宙に他の文明が存在していても
途方もない距離なので
地球に来る事は不可能だと言われてきた

しかしアメリカは宇宙軍を作り
ワームホールという時空の抜け道で
空間を歪めるワープ航法は可能と発表し
ＵＦＯの存在も匂わしている

外から来た文明の方が勝っている
先住民を駆逐したアメリカは
地球に宇宙人が辿り着いたら
何が起きるか解っている
だからアメリカとロシアで
それぞれ７千個の核兵器を持ち
東西冷戦に見せかけて
宇宙人と交渉してきたのだろう
ＵＦＯの存在を匂わしたのは
何かしらの決定があったと推測する

ブリーフケースの核ボタンによって
ＵＦＯはおもむろに着陸できなかったが
ロシアのウクライナ侵攻で
東西のバランスが崩れてから
世界各地でＵＦＯの目撃が相次いでいる

混乱に乗じて着陸されたら
宇宙冷戦のバランスが崩れてしまうが
人間同士で戦っている場合ではないと気づく
ラストチャンスかもしれない