105号　2023年　春号の詩

 人生の下着

いいですかみなさん
学歴とは人生の下着ですよ
街を歩く人は
どんな下着を着ているか判りません
着けていない人もいます

確かに街を歩くには
どうでもいいものです
ただ下着は
身なりをきちっとします
姿勢も保ちますし匂いも抑えます

人生の下着ですから
いいものを着けたいですよね
似合うもの褒められるもの
そのために頑張るわけです

ただね
あくまで下着ですから
下着のファッションショーも
若いうちだけで
いずれ上着のセンスが問われます
世の中なんでも
磨けば光るものですが
下着で磨くと早くよく光ります

 やめるをやめた

学生のときは
教育がおかしいと思ったから
学校をやめた

社会人になって
組織がおかしいと思ったから
会社をやめた

旅人になって
国家がおかしいと思ったから
主張をやめた

孤独になって
自分がおかしいと思ったから
やめるをやめた

 酒場に酔った王子様

結局ね
白馬に乗った王子様は現れなくて
酒場に酔った王子様が現れたの
それが旦那

チャラチャラしてたから
無関心で防御したら
無関心は最大の攻撃だよって
攻めてきから言い負かして
放っておいたら飲みすぎてたらしく
潰れてしまって介抱したの

王子様に
助けてもらうつもりが
王子様を助けたって訳よ
でもね
助けてもらうよりも
助けて生きるほうが楽しいかな

えっ？
王子様は酒場に来ない？
一般人と一緒になる王子様は怪しい？
そうよね
もう自分に酔っているから
どうでもいいの

 友人飛行

僕が飛べたのは
彼らがいたからだ
一人ぼっちでは
今も飛び立てていない

 ウヨク、サヨク、ムヨク

家内は
右翼でも左翼でもない
無欲の人だ

日々家事をこなしながら
左翼的なことを言う
効率悪いからこうしてと

日々愚痴をこぼしながら
右翼的なことを言う
嘘でもいいから感謝してと

手伝うからと言うと
できないからやっている
期待なんてしていない
無欲だからと言う

右翼と左翼で
バランスを取りながら
無欲でいられることを
家内は望んでいる

私が職場で
問われるのは意欲
家計を支えるために
全力で飛んでいるから
家では主翼を休めたい

 カーナビでたどり着けないニューモデル

十年ぶりに乗り換える
クルマの商談熱帯びて
試乗してみたニューモデル
オプション見たら驚いた
カーステレオの記載なし
「お客様、音楽聞きたい場合には
　カーナビだけしかありません
　30万円しますけど
是非とも付けて頂きたい」

待ってくれ
スマホで十分たどり着く
カーナビ使う機会ない
カーステレオだけ付けて欲しい
「お客様、その設定はありません
　アフターマーケットのものを
　自分で取り付けして下さい
　でもそれを付けると電気系統の
　保証はできない決まりです」

待ってくれ
昔は有名ブランドの
プレミアムなステレオを
ラインナップしてたはず
どういうことかと尋ねると
「お客様、従業員を守るため
　決まったカーナビ以外には
　対応しない決まりです
　なぜならばクルマ自体の品質と
　関係のない音質の
　クレーマーに悩まされ
　値段と割が合いません」

待ってくれ
一部のそんな身勝手な
クレーマーの対策に
30万円払えとは
納得できる訳がない
音楽をイヤホン以外で聞けるのは
クルマの中だけなのだから
妥協できる訳がない
「お客様、プレミアムなステレオは
　モデル末期で格下の
　あのクルマだけまだあります
　そちらを検討されますか？」

待ってくれ
安全性と走行性
それで待ってたニューモデル
それを音楽環境で
クルマを変えろと言われても
「お客様、カーナビで
　一変しますよカーライフ
　これで世界が変わるのです」
さっきまで熱く語った営業マン
徐々に目と目を合わせない

待ってくれ
クレーマーの対策に
30万円かけてまで
みんなカーナビなぜ選ぶ
「お客様、カーナビは
　使わなくても資産です
　下取りの査定価格が上がります」

待ってくれ
次に売るため買うのなら
人から借りて乗るようで
楽しく乗れる訳がない
「お客様、カーナビが
　査定アップをナビゲーション
　迷うことなく楽しめます」
カタログを片付け始める営業マン
たどり着けないニューモデル