104号 2023年 冬号の詩

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 マスクトレーニング

事務局長
強引でしたがコロナ禍に乗じての
マスクトレーニングは順調です

表情が見えないマスクで
鍛えられたコミュニケーション能力は
これからの顔に頼らない時代への
道筋となりました

そうかこれで
いつ宇宙人が現れても大丈夫だな



 190倍のパフォーマンス

「あぁ、やはりいいねこのクルマ」
「そうだろう」
「あぁ、でも値段のうち何万円かは
 国外逃亡したあの人の資金に
 なっているのが納得いかないよね」
「そう、それね、計算してみたんだよ
 捕まる前年の年収が19億円らしい
 当時あのグループの年間生産台数が
 1千万台なので1台からは
 190円もらっていることになる」

「えっ、190円なの?
 なんか、思っていたより安いな」
「そうなんだ
 それで気持ちが収まったと言うわけさ」
「なるほど」
「でもね、計算してみて思ったんだよ
 同じグループで年収1千万のエンジニアは
 1台からもらうのは1円なんだよね
 つまり、190倍の給料だよ?」

「えっ、そういうことかぁ
 創業者一族ならまだしも雇われトップで
 190倍に見合うパフォーマンスをこなして
 背任行為までできる余力があったなんて
 このクルマと同じ、化け物だね」
「そうだね、化けの皮を被っていたとしてもね」
「オレは会社のハンドルよりも
 クルマのハンドルを握れるだけ稼げればいいかな」



 コスパ至上主義

品質がいいだけと
性格がいいだけでは
生き残れないんだ

デザインがいいだけと
マスクがいいだけでも
生き残れないんだ

コスパがいい物と
コスパがいい人しか
生き残れないんだ

夢や憧れを
コストカットして
現実に収まる人しか
生き残れないんだ



 人心売買

昔あった人身売買
経済事情で人権を売っても
心は売らなかったそうだ

それが今は
心が小分けされて
ネット上で売られている

自分の心を痛めずに
買える心が欲しかった
コスパとリスク回避で
心が売買されていく

買った心は草花と同じ
咲くか枯れるかはあなた次第
そんなゲーム感覚で
成立する人心売買に
人類の増減が託されている



 転生するにもほどがある

メソポタミア文明は
8千年前誕生し
文明最古と言われてる
もしもの話であるけども
輪廻転生してるなら
僕らの社会はどれくらい
転生してきた姿だろう

ちょっと計算してみよう
例えばこの世で80年
あの世も80年とする
160を1として
8千年だと50回
生まれて生きて死んできた

地球は膨らむ太陽で
温度がどんどん高くなり
10億年で生物は
住めなくなってしまうらしい
50回目の転生で
未来予測ができるほど
発展してきた人類は
これから先の10億年
625万回
僕らは転生繰り返す

まだまだたった50回
だからやっぱりこの程度
たいしたことない人生と
割り切り来世を夢見るか
625万回
転生するにもほどがある
転生なんてありゃしない
1回だけの人生と
ここで踏ん張るしかないか



 復興するまで復島県

春の観光ポスターの件ですが
福島県の「福」の字にバッテンをつけて
復興の「復」に変えるという
提案が出ています

わだしは賛成です
まじめくさって復興を訴えでも
ひとっつも進まねぇ
こういう駄洒落で引ぎづげだほうが
いいど思います

そうがな
自虐ネダだげど
ちっと笑えねえなぁ
来てくれる人だぢにも責任あっから
復興に来でぐれって
言っているみだいで
なんかなぁ

おれもその字が
復興じゃなくで
復讐に見えんだよね
警戒しっちまうんじゃねぇがな

そうだよな
もう元には戻んねぇ
まだ危険な地域に帰還するっつうのは
何がに復讐しようどしてるって
マイナスに思われんでねぇがなぁ
そんなごどねぇのになぁ

わかりました
これは不採用とします
次は福島県の「島」の字にバッテンを

ちょっと待で
そんな提案ばっかりがよ

はい
復興が進まなくてヒマな
福ヒマ県を忙しくして下さい!
という案です

否定はできねぇなぁ