107号　2023年　秋号の詩

 不透明登校

先が見えないから
学校に行かないのが不登校
先が見えなくても
学校に行くのが不透明登校

逃げないのは強いと
褒められるが
逃げるだけの強さが
無いだけなんだ

心が弱いから
行って鍛えるしかないんだ

 口裂け女だらけ

1979年に日本中を震撼させた
口裂け女
私って綺麗？
と言ってマスクを外すと
口が耳元まで裂けていたと言う

当時は大き目の
マスクをした女性は
子どもたちに怖がられた

2019年から世界中を震撼させた
新型コロナ
私って危険？
と言ってマスクを外すと
口数が減り会話を避けていると言う

今では大き目の
マスクをした女性は
子どもたちを安心させる

40年後に
口裂け女だらけになるとは
夢にも思わなかった口裂け女も
還暦過ぎているはずだが
年齢を感じさせない美魔女として
潜んでいるのだろう
私って奇跡？
と言ってマスクを外すかもしれない

 隠れキリシタンセール

ねえ
このクリスマスのイルミネーションを
江戸時代の隠れキリシタンが見たら
どう思うのかしら

そうだな
複雑な心境だと思うな

そうよね
でもきっと喜んでいるわよ
神社やお寺の行事で
商店街をこんなに飾らないから

確かにな
隠れキリシタンで賑わう
クリスマスセールか

懺悔のプレゼントは
あの角を曲がってすぐよ

 地球征服は終わっていた

やっとわかったよ
地球上で人間だけが
服を着たり文明を持ち
殺し合ったり自殺する

おかしいと思っていたら
どうも宇宙人による
地球征服は終わっていたんだ

 ＵＦＯの断片

そそられる記事だった
「ＵＦＯの断片が初公開！」
「福島市で特別企画展開催！」
私は行かなければならないと思った

２０２１年６月に
アメリカの国家情報長官室から
ＵＦＯの目撃情報と
その脅威に関する報告書が公表されて以来
ＵＦＯの断片への信憑性は高くなっていた
しかし不安はあった
『月刊ムー』とのコラボレーション企画
それがフェイクかどうかは
現物を見た人にしか語れないので
ためらうことなく入場料を支払った

破片は灰色でわずか１センチ角
微量の放射能を帯びた薄い金属片
写真撮影は禁止ということで
「イチエフで拾ってきたんじゃないのか？」
誰かの一言にドキッとした

真贋かどうかの判断は２０１９年に
アメリカで採取した状況のみだが
入場者は後を絶たない

国があてにならない以上
宇宙人の高度な知能で
イチエフをなんとかしてもらいたい
福島県民はＵＦＯに救われたいのだ

 画面夫婦

仮面を被って話をするのと
スマホの画面を通して
話をするのは同じだ
もう好きではないけれど
まだ嫌いではない

画面を通じた話のほうが
穏やかなのはもう冷戦だからか

冷戦のほうが平和だったと
子どもに言われる日が怖い