101号　2022年　春号の詩

 働き方変革

残業ができたときは
お金になるけど
したくなかった

残業ができなくなったら
お金にならなくても
したくなった

国家という親に
会社という恋人を
引き離された感じ

 衣食電

お金も手紙も電子化
写真や文書も電子化
学びも仕事も電子化
オモチャもクルマも電子化
心や病も電気電子化

衣食住から衣食電に
変わったから
住む家がなくても
ホテルやネットカフェで
生きていける

電子化で居場所を
持ち運べるように
進化した人と
持ち運ばざるを得ない
退化した人が生まれた

 育て、親

子育てでは
教えてもらうことばかりで
それで自分が成長していると
思っていたが
子どもが自分を理解する親に
育てていたのだ

子育てに成功も失敗もないと
言っていた
父の横顔を思い出す

 コロナ入社

あぁ、お父さん、俺たちこれから先
コロナ入社って言われるみたいなんだ

そうか、お父さんたちも
バブル入社と言われたよ
恵まれすぎて使えない新人類とも言われた
それが経営層になった今
新型コロナウイルスだなんて因果応報だよな

あぁ、超氷河期世代と同じになるのかな
ニート、フリーター、派遣って
同じ人間なのに階層ができたんでしょ？

そうだ、差別ではなくて区別だとか言ってな
職場に溝ができたんだ
今度は在宅格差だな
リモート勤務できるできないで
命が差別されてしまった

あぁ、ネットワークが進んでいたから
オンライン会議とかで
なんとかなった感じではあるけど

そうね、その世代を象徴するツールは
後から笑い話になるからね
お父さんの入社した時代の
最先端はファックスだったんだ

あぁ、でもファックスはまだあるよね
ポケベルには笑ったけど

そうだそうだ
お父さんが入社した時
ポケベルの新製品立ち上げで
静岡の工場に行かされたよ
ファックスで届いた変更図面が
粗くて読めないって怒られて
新幹線で図面届けた
でも夜に鰻ごちそうになった

あぁ、いいな
そういうの無くなるんだろうな
来週、オンライン出張でとか
言われて意味わかんないし

 発泡酒美人

本物ではないが
似ていると自慢できる
越えることはできないが
映えることはできる

お高くなくても
弾けることができれば
薄い人生でも
クリーミナーな
泡に包まれるかも

 詩人買いませんか？

いかがですか？
自主出版するなら今ですよ
五百冊でこんなにするのと言われましたが
何もしなければ詩人にはなれませんよ
自分への投資だと思えばいいのです

いや、納得できない気持ちは解りますよ
でも、趣味にこれぐらいは出すでしょう
楽器を買って習うにも
免許取ってオートバイを買うにも
これぐらいポンと出すじゃないですか？

いや、店頭に並ばないって言われても
ＩＳＢＮコードもある訳ですから
自分で売り込めばいいんですよ
インディーズのミュージシャンは
手売りで栄光をつかんでいるんですよ
インディーズの詩人として
リスクを取らなければ
リターンはないですよ

いや、博打ですよ
我々はその博打に付き合いましょうって
言っているんです
才能を認めるなら商業出版だろうと
みなさん言いますが
詩集は売れるものではなく
売るものなのです
その商売道具を仕入れませんかと
提案しているのですよ

いや、霊感商法みたいだなんて
そんなふうに取るんですか
それじゃ、話は無かったことにします
いや、また今度は無いですよ
詩人は買うものだと納得されないと
詩が書けなくなるそうです
頑張ってくださいね