京町家で詩朗読

古書と茶房 ことばのはおと（京都市）

詩を朗読して、いったい何をしたいのでしょうか。 　2007年10月06日の言鳴７（ことなり）はいつもと違って、朗読のプロ女性三人組が登場しました。目の前で、与謝野晶子らの著名な詩を丁寧に色づけて自分の魂のように読み上げていく技量は見事で、まるで演歌歌手のステージを見ているようでした。 　それに比べて、自作自演で限りなく自分の魂であるがゆえに、本当に伝わっているのだろうかと疑念を持つ私の気分は、路上の下手なシンガーソングライターみたいでした。 　でも、終演後ある方から「イオンさん朗読は東北なまりがほどよく出ていて味がありますよ、まねできない、ずるいですよ」と言われ、ちょっと褒められました。 　関西人は関西なまりに劣等感がないようなので、なまりに対して寛大なのでしょうか。 　逆に関西なまりを消して標準語で朗読するのはしんどいとは聞きますが。 　朗読のプロ女性三人組の完璧な朗読とは対極的な自分ですが、張り合うには「味」で勝負というところでしょうか。いやいや、詩の朗読で勝負をつけるというのは、いかがなものでしょう。 　言鳴という朗読イベントに出るきっかけは、2005年の夏にKSSWという京都での朗読対抗戦のイベントで知り合った言鳴主催者からの誘いです。このKSSWは朗読×ラップ×歌となんでもありで、私は一回戦敗退で終わりました。 　私は坊主頭でアコースティックギターをかき鳴らして、青春とは何だと叫びまくる青年に負けました。審査員やお客様は私よりも若い方々がほとんどで、テキストの良し悪しよりもインパクトのあるパフォーマンスを求めているんだと解りました。 　以前、テレビで見た「詩のボクシング」で、テキストがなく、声音だけを発して勝ち進んでいくのを面白いと肯定する。今はそんな時代なのだと裏書された気分でした。 　聞き手がいない以上、朗読する意味がないと思い、朗読イベントに興味が向かなくなりました。 　言鳴は音楽や楽器を使わず、朗読だけで10分間自由に表現していいという条件でした。 　是非イオンさんに出演して欲しいと言われると弱く、朗読に再び打ち込むことになります。お客様の中には「イオンさんの詩を聞きたくて来ました」と声をかけてくださる方もいて嬉しくなり、聞き手がいる以上続けなくてはいけないと、日程を調整して言鳴５まで連続出演しました。 　しかし、言鳴５で異変を感じます。ある出演者が持ち時間の10分間を演台の上で黙りつづけるという朗読？をしたのです。最後は自分でも耐え切れなかったようで、制限時間間際に1つだけ読みましたが、誰も沈黙の間にブーイングがありませんでした。しかも、その日のお客様のアンケートの集計で人気度は13人中で3位という結果です。詩人の世界は狭いもので、知人縁故を誘って来ていたのでしょうか。でも、だからと言って、お代(1000円)を払っている人達の前に、朗読すると出て行って何もしないというのは非常識で、他の出演者に対しても失礼極まりないと思いました。 　こういうことをするから詩人は変人だと思われてしまうのです。 　しかし、一番のショックは、沈黙でも13人中で3位という結果が示すように、結局、朗読会というのは知人縁故の集まりでしか成り立たないということです。 　でも、私は知人縁故を呼ぶ気がないので、逆に言鳴でのお客様の反応を真の聞き手の反応と捉えることができて、メリットが多いのです。だから今後もできるだけ出演したいと考えています。 　詩を朗読して、私はいったい何をしたいのでしょうか。 　黙読で心にしみ込む詩もあれば、聞いて続きが生まれる詩もあります。 　2001年7月28日に山形で行われた「詩のボクシング山形大会」に参加した私は、二回戦で敗退しました。一回戦は「おぉトイレ」で山形県高校生詩のボクシングチャンピオンの女子高生に勝ち、二回戦では「極秘指令、円谷プロ」で敗退しました。 　私に負けた女子高生はリング下で「トイレの詩に負けたので話しのタネになります」と微笑んでくれました。大会終了後、会場出口で女子高生２名が私に駆け寄り「あのぉ、残念だったけど、すご〜く面白かったですよ」と言ってくれました。 　私はいったい何をしたいのか。 　誰かの人生に、一瞬でいいから入り込みたい。たぶん、それだけだと思います。 古書と茶房 ことばのはおと http://www.kotobanohaoto.net/

第１回開催時の模様

言鳴朗読リスト 〇言鳴１（2005年11月5日（土）） かもしれない運転 伝えたいこと 開封後要暖房 寝だめ食いだめ恋だめ つむじ ボクだけきっと火星人 猫背一族の野望 極秘指令、円谷プロ 世紀末試験 あなたの駅 〇言鳴２（2006年1月14日（土）） ビニ弁レガシィ １センチメンタル 墓 充電人間ユミコ ダメ予知能力 魂臓 東京ウェーデルン ペアリフト 充電人間タモツ 〇言鳴３（2006年7月8日（土）） 36℃ 電線ギター ラストワルツ 赤子の寝顔で電卓遊び おぉトイレ 図面ライダー 美人多し脇見注意 〇言鳴４（2006年10月7日（土）） 人間分別ゴミ シャリラー追放 個人的地球破壊 ふくれっ腹 ガンバレ難民 だからもの 宮沢賢治朗のホームページ 半額マニア 印税詩人 〇言鳴５（2007年3月18日（日）） テレビンボウ めざしがめざしたもの 現在、過去、めまい 交流安全運動 親切ネズミ講 シンガーソングライダー 糸探し紀行 旅に持ってく忘れ物 〇言鳴６（怪我で療養中のため欠場） 〇言鳴７（2007年10月06日（土）） 女性専用車両 金箔寺 ボンバルディアで自殺未遂 ゴロリスト 天才メタボン みにくい明日の子