93号　2020春号の詩
1.	平気でいられない兵器
2.	全国巣ごもり選手権
3.	全国不登校体験会
4.	ソーシャル・ディスタンス
5.	ランバダウイルス
6.	自殺ウイルス

平気でいられない兵器

新型コロナウイルスが 平気でいられない兵器だとしたら 心理的核兵器と言っていいだろう

|タイトル|

---

全国巣ごもり選手権

新型コロナウイルスで どれだけ長く家にいられるか 全国巣ごもり選手権 賞金は十万円と 記念品にアベノマスク二枚

|タイトル|

---

全国不登校体験会

新型コロナウイルスで 学校が休校になった時 不登校の息子が ボクは今日から不登校でなくなる とポツリと言った 新型コロナウイルスで 休校が延長された時 不登校の息子が 行きたくても行けない気持ちを みんなが味わうんだ とポツリと言った 新型コロナウイルスで 分散登校が始まった時 不登校の息子が 席を１つ開けてくれるなら 学校に行ってもいいかな とポツリと言った

|タイトル|

---

ソーシャル・ディスタンス

すでに、個人情報保護法で 人と人の心は離れているから 人と人が離れることに抵抗はないが 新型コロナウイルスに感染した時 いつも通うバスに乗る人々が 本当は誰なのかわからないのが ウイルスよりも恐いと思った すでに、何かとハラスメントで 人と人の心は離れているから 人と人が離れることに抵抗はないが 人格を攻撃するコロナ・ハラスメントは ウイルスよりも恐いと思った すでに、ソーシャル・ディスタンスは 社会と個人の距離を意味していたはずだが 個人と個人の距離に置き換えられた 意味が転じた言葉には 社会を混乱させる感染力があるので ウイルスよりも恐いと思った

|タイトル|

---

ランバダウイルス

ブラジル生まれのランバダは 男女がペアで踊るダンスで 1980年代の日本のディスコでは 密閉、密集、密接な場所で 腰をくねらせて股間を密着する 猥雑なランバダは自粛させられた 2020年は中国生まれの 新型コロナウイスの乱場だ 密閉、密集、密接な場所で 心をくねらせる猥雑な乱場は 営業を自粛させられている 散らかった政策 曖昧な経済封鎖 場当たり的な学校閉鎖 誰も判らないから 最悪を想定すると言う政治家には 乱場を収束する筋書きはなく 開けない夜は無いと連呼するだけだ もう国民は新型コロナウイルスと ランバダを踊るしかないのだ 演奏はいつか終わるが 踊らされた我々は 昨日と同じ目で政治の舞台を 見ることはできない

|タイトル|

---

自殺ウイルス

新型コロナウイルスで 全世界が死を身近に感じて 感染拡大を防ごうとしていても 毎日、自殺する人はいる 誰もが互いの死を恐れて 加害者にならないようにしている しかし互いの自殺を恐れて 加害者にならないようにしてはいない 自殺する人は配慮できる人が多い だから自殺の直前まで 自分が感染していないかを気にして 亡骸はマスクをしているかもと思い 自殺・マスクで検索したら 首吊り自殺に失敗した人のブログを見つけた 舌が出る姿を見せたくないので マスクをつけるらしい ブログには今から死にますという人が コメント欄に遺書めいたものを綴っている 不幸に憎しみを書き殴るのものは一件もなく 先立つ不孝を許して欲しいというものが 百件以上も綴られている 他人のことを考えないから 自殺するのではない 他人のことを考えすぎて 自分を他人から排除しようとしているのだ 自分はコロナウイルスに感染していて まき散らす恐れがあると思って 行動をして下さいと政府は言う 自分は自殺ウイルスに感染していて まき散らす恐れがあると思って 行動をして下さいと政府は言わない 「この命がウイルスのように 　伝染して生き延びれたらいいのに 　次の誰かとやり直せたらいいのに 　明日、緊急事態宣言の夜に逝きます」 緊急事態宣言で 自殺したような街の裏通りで 誰かが命綱にぶら下がる

|タイトル|

---