92号 2020冬号の詩
 
1. カスゴローン
2. 善悪輪廻 
3. コインランドリーノート 
4. 銀行振込日本征服作戦 
5. スパイ精密検査 
6. ゲレンダー ゼロワン 

作:イオン

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 カスゴローン
 
「いいクルマなんだけどなぁ
 いい気分で乗れなくなったよ」
「確かになぁ
 カスがゴローンと楽器のケースに寝転んで
 脱出するのに16億円かかったらしいよ」
「俺たちが汗水鼻水流して払った一部が
 国外逃亡に使われたと思うと気分悪いよな」
「そうだなぁ」

「それにクルマは、倫理遵法の塊だろう
 だから命を預けることができるのにね
 経営トップは倫理遵法を司るのが仕事なのに
 疑惑の資金で自分を密輸していいのかよ」
「無実を叫ぶ権利を16億円で買った訳だ
 投資効果も計算済だろうけど
 逃亡犯がヒーロー気取りって
 恥ずかしいよね」

「脱出方法を臭わせて
 マスコミを引き寄せておいて
 保釈中に悪の組織と通じていたなんて
 言いえませんだって」
「日本にはドラエモンがいるので
 どこでもドアを使いましたって
 言ったほうが面白かったのにね」
「そうだね、どこでもドアって
 今の技術で実現するのに16億円かかるってこと
 それを証明した訳だ
 そこは誉めておくかぁ」
 
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 善悪輪廻
 
善いことばかりしてきたけど
うまくいかない事ばかりで
ワタシ、つまらない

悪いことばかりしてきたけど
うまくいく事ばかりで
オレも、ある意味でつまらない

ワタシ不良になって
人生変えてみようと思うの
ねぇ、いろいろ教えてくれる?

イヤだね
不良ってそんな不真面目じゃないよ
真剣に不真面目なんだよ

うそー、だって、不良って
なんでも投げ出せばいいんでしょ?

中途半端に投げ出さないよ
全力で投げ出すんだよ
だから不良をやめる時は
全力で不良を投げ出すんだ
ヒロト先輩見てみろ
 
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 コインランドリーノート
 
乾燥機の横に
ノートが吊り下げられていた
落書きが多いノートの最後に
「心を洗える洗濯機を入れて欲しい」とあり
お店のコメントは
「探してみます」と書いてあった

ちょっと笑えて心が洗われた

ある日
自動販売機の炭酸水に
「心の洗剤」という紙が貼ってあった
ノートには
「洗濯機は無かったので
 洗剤としていかがですか
 手洗いになりますが」とのこと

一本買ってみた
 
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 銀行振込日本征服作戦
 
「あの美しい富士山のてっぺんに
 円盤を停めるのも悪くないなぁ」
「はい、隊長」
「よーし、我々宇宙人の征服作戦は
 まずあの日本から開始する
 おい、資料を見せてくれ」
「はい、隊長」
「なるほど、これはいける
 日本の給料は銀行振込だ
 公共料金も引き落としで
 キャッシュレスも推奨している
 データ操作で国民の預金残高を
 一桁増やしてやれ」
「隊長、現金以上に預金を
 増やすということですか」
「そうだ、それが犯罪だとしても
 残高が増えれば国民は我々を支持する
 既に日本政府は年金問題という
 犯罪を犯しているからな
 政府はパニックになる
 そこを狙うんだ」

「隊長、お言葉ですが
 日本政府には問題があります
 借金も財産という政府らしいのです」
 
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 スパイ精密検査
 
「まったく問題ないですね」
「先生、私は他の人と同じことができないんです
 人と違うところがあると思うんですが」
「なるほど、他の人と違うところね
 あぁ、少し左に偏っていますね思考が」
「えっ、思考って写るんですか?」
「画像から読み取れるんです」

「先生、人間にしては変な臓器とかないですか?」
「あぁ、最近の宇宙人はね、よく似せているんです
 スパイですからね、ばれないように
 スパイであることも自覚していない人が多いですよ
 あなたみたいにね」
「自覚していないって?」
「ほら、SNSで問題になる投稿があるじゃないですか
 どうしてそんな投稿するんだろうっていうの
 自覚していれば、炎上承知で書かないでしょう」
「そうなんですね
 それじゃ、私が宇宙人の可能性も?」
「ありえますね
 人間であることに疑問を持っている時点で
 宇宙人の可能性は否定できません」

確かにCTスキャンの輪切り画像は
宇宙人の顔に見えた
 
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 ゲレンダー ゼロワン
 
私の名は「ゼロワン」
このスキー場のゲレンデを
演出するゲレンダーです

一人淋しく
ペアリフトに乗る時は
さっと、隣に飛び乗って
心が凍える時間を与えません

一人激しく転んだ時は
さっと、手を差し伸べて
孤独なもがきを解きほぐします

記念写真に困ったら
さっと、カメラを拝借し
みんなの笑顔を欠かしません

注目されたいあなたには
さっと、後ろを追いかけて
あなたの滑りを引き立てます

私はゲレンダー
ちょと困った瞬間に
両手で大きな丸を作って
「ゼロワン」とつぶやいてください
もう、あなたに寒い思いをさせません
 
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