89号　2019春号の詩
1.	赤いスマホで結ばれて
2.	向上しない向上心
3.	ギラギラネーム
4.	しこりに花を咲かせましょう
5.	ドリームシューズ
6.	ポジティブ症候群

赤いスマホで結ばれて

目に見えない運命の赤い糸 昔は縁で繋がっていた 今は無線で繋がっている 簡単に繋がるから 簡単に切れてしまう 赤い糸も進化して 点線でも繋がっている 糸をたどって結ばれたのは 電池を切らさなかっただけ 簡単なようで難しい

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向上しない向上心

人は空を飛びたいと 飛行機を作ったが 戦いを酷くした 人は距離を越えたいと 通信機を作ったが かえって孤独になった 向上しない向上心が 向上心を手玉に取る 人は笑顔を残そうと 映像機を作ったが 生き恥を晒している 人は信用を流通しようと お金を作ったが 人の心も流通している 向上しない向上心に 嫉妬したら終わりだ

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ギラギラネーム

家では子どもにキラキラネームをつけて 人と違った個性になって欲しいと プレッシャーをかける 学校では子どもの個性に注文をつけて 人と違ったことをしないで欲しいと プレッシャーをかける キラキラネームに折り目がついて ギラギラしていく

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しこりに花を咲かせましょう

わだかまりがあって 心の中にしこりができたが それをつぼみと思うようにした 抜け駆けがあって 心の中にしこりができたが それもつぼみと思うようにした 感謝の気持ちを与えれば 花が咲くと言われたから どんな花がどれくらいで 咲くのだろう でも汚れた気持ちが 覆い被さって暗くなるから 黒い花かもしれない 乾いた気持ちで接しよう サボテンの花みたいに めげないはず わたしのしこりだから

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ドリームシューズ

夢は希望に辿り着くための靴である 履き潰したら新しい靴を探せばいい その靴を直してもいい 早くより楽しく 歩ける靴がいいけど 早く着くために 我慢して履くのもありだ 重いより軽い靴がいいけど どうせ死ぬまで歩くのだ 早く着かない重い靴でいい

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ポジティブ症候群

「なので、先生、どうしてもね 　ポジティブ思考ができないんですよ」 「そうですか 　ポジティブ思考ができない症候群ですね」 「先生、なんかそのままの病名ですが？」 「そうです、それでいいじゃありませんか」 「治るんですか？」 「治りません、諦めて 　ネガティブであることを、ずっと 　ネガティブに考えていくしかないのです」 「治療とかは？」 「それが治療です 　まずは、ポジティブ思考から解き放たれて 　自分はダメなんだと考える自分がダメなんだ 　そう考えて答えが出せないからダメなんだ 　ダメなままが許せないからダメなんだと 　追い詰めて、とことん嫌になってください」 「そ、そんなぁ」 「人間は自分が嫌になるために生きています 　自分が好きになったら成長は止まるのです 　自分が変わっていくにはネガティブが必要なんです」 「それじゃ、嫌になれば良くなるのですか？」 「なりません 　治療があるかとの質問ですが 　先ほど言ったように 　人間は本来、ネガティブ思考です 　なので、正常な思考に戻して頂くだけです」 「でも、もっとポジティブに生きなさいと 　前の病院では言われたのですが？」 「あのですね、ポジティブ思考は病気なんですよ」 「病気なんですか？」 「そうです 　ただね、一病息災でね 　ポジティブ思考という病を持つことで 　残りの人生を大事にしようと思う訳です」 「はぁ、なるほど」 「ネガティブであることを 　ポジティブにとらえていけばいいんです」

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