91号 2019秋号の詩
 
1. タイムクラベル
2. 現状意地 
3. 描き損じラブ 
4. リーマンショックブラザーズ 
5. ギャンブルカメラ 
6. 雨にもマカセ 

作:イオン

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タイムクラベル
 
タイムトラベル
縄文人は思った
舗装した道路で
なぜ靴が必要なのだ

タイムクラベル
弥生人は思った
食べる以上作って
捨てる意味がわからない

タイムナラベル
侍は思った
携帯電話は武器なのに
なぜ訓練しないのだ

タイムエラベル
忍者は思った
SNSがあっては
仕事にならない

タイムシラベル
元日本兵は思った
臭いがしないゲームで
真剣になんてなれない
 
|タイトル

 
 現状意地
 
努力という苦しみを
努力という新記録に変えてみよう

貧乏という苦しみを
貧乏という味わいに変えてみよう

孤独という苦しみを
孤独という静寂に変えてみよう

責任という苦しみを
責任という体験に変えてみよう

死ぬという苦しみを
地球離脱の宇宙旅行に変えてみよう

現状を維持するのではない
意地を張って現状を変えるのだ
 
|タイトル|

 
 描き損じラブ
 
子どもには夢を描く道具が必要
買い与えるか拾ってくるか
いやいや地面に
自分の指先で描けると言う
子どももいる

できれば描き直せる
鉛筆がいいのだけれど
ちょっと凝りだして
消えないペンを選んだりすると
描き損じても消えない

だから大人になって
避けていたのに出会ったり
極めたつもりでも満足できない
 
|タイトル|

 
 リーマンショックブラザーズ
 
第一次リーマンショックは
リーマンブラザーズの経営破綻による
世界連鎖的な金融危機で
サラリーマンの購買意欲が低下し
世界経済が冷え込んだ

第二次リーマンショックは
政府主導の働き方改革による残業規制で
サラリーマンの働く目的が社会貢献ではなく
残業しないことになり
仕事への情熱が冷え込んだ

第三次リーマンショックは
生産人口減少と超高齢化社会により
サラリーマンの定年が撤廃されて
死ぬまで働ける喜びとすり替えられ
シニア消費が落ち込むだろう

第四次リーマンショックは
サラリーマシン「ブラザーズ」の発売だ
ロボットに代わりに働いてもらう人と
死ぬまで自分で働く人とに別れるだろう
ロボットを買えなくて働く人と
ロボット任せが嫌で働く人しか出勤しなくなり
引きこもりがスタンダードになるだろう
 
|タイトル|

 
 ギャンブルカメラ
 
いい写真を撮るのではなく
いい写真を探す時代なのだ

フィルムカメラの時代は
一枚を写すのに時間と知恵をかけて
自分の芸術を探していた
デジタルカメラの時代は
大量に写して選ぶのに時間をかけて
偶然の芸術を探している

ボクは写真が
宝くじみたいなギャンブルに
なってしまったと嘆くと
キミはウォークマンで
音楽が体の一部になったように
スマートフォンで
写真も体の一部になったと微笑む

ボクはシャッターチャンスが
後から選ぶものになって悲しいと言うと
キミはチャンスがなくなって気楽と
ボクの左手を連写した
 
|タイトル|

 
 雨にもマカセ
 
雨にも任せ
風にも任せ
雪にも夏の暑さに任せても
大丈夫なカラダを持ち
画策はなく
決してイケてなく
いつも静かに解っている

嵌められもせず
首にもされず
いつも静かに混ざっている
そういう者に
私はなれない
 
|タイトル|

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