83号 2017秋号の詩

  1. 無職透明
  2. 有刺鉄線
  3. あかん地区自治会
  4. 自動運転
  5. 透明な血
  6. 指定券紛失
作:イオン
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無職透明

仕事をしなければ
何色にも染まらない

だけど色づくこともない

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有刺鉄線

有刺鉄線を踏みつぶして
乗り越えるために
戦車が発明されたという

有刺鉄線は爆風を受け流し
砲撃だけで排除できない
単純なのに鉄壁よりも強固

有刺鉄線の向こう側
言葉も聞こえるし表情もわかる
指先だったら触れることができるのに
抱きしめ合うには
戦車が必要

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あかん地区自治会

そりゃあかんが
山積みされた自治会
そりゃあかんの解決方法が
そりゃあかんなのだ

そりゃあかんから
自治会を辞めるぞと抗議すると
そりゃあかんと
役員側が辞める人を抗議する

市民への配慮と
隣人への配慮は違うと
お役人は介入しない

隣人への配慮を
そりゃあかんで解決すると
決めたのは自治会であると
お役人は関知しない

本当にあかんのは
誰だろうなんて
追い詰めるのはあかん
それが民主主義だからと
お役人は受付ない


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自動運転

自動車の自動運転は
人間が楽をするためではない
事故に遭わないことが目的だ
味気ないけどね

それなら人生も
自動運転にすれば
事故に遭わないよね

そうだね
いじめや失業
失恋が無くなる
味気ないけどね

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透明な血

「血がね
 赤ではなくて透明だったら
 怖くないのにね
 神様は意地悪」

「まぁ、意地悪じゃないよ
 赤いのは鉄分なんだよ」

「涙もね
 透明ではなくて赤くなったら
 とてもひどい事をしたと思うのにね
 神様は意地悪」

「涙はね、涙腺の中で
 鉄分を取り除かれた血だからね」

「もし涙が赤くなったら
 涙腺の処理が間に合わないくらい
 悲しいということになるのね」

「そう言う事になるけど
 雰囲気ぶち壊しになるよね」

「そうよね
 でも、流す涙は血なのね
 それ、よく覚えておいてね」


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指定券紛失

アナタは指定券を紛失したから
自由席に乗ってきた
ワタシは指定席が嫌で
自由席に乗っていた

車掌に説明したことがきっかけで
隣同士会話が弾んだ

指定席は嫌な人の隣になったら
移動できないので我慢するしかない
自由席は移動できる
持ち家と賃貸みたいなものねと言ったら
アナタは不動産の仕事で出張だと笑った

名刺を交換することになって
名刺入れから指定券が出てきたけど
アナタは自由席のままワタシと話しを続けた

指定券を紛失しても
電車に乗ることはできる
でも到着する場所が変わるのね

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