75号 2015秋号の詩

  1. 終着秋
  2. 草食スマホ
  3. ウエストサイズストーリー
  4. カレースプーン
  5. 交通事故予報
  6. 手羽先をつまむ指先
作:イオン
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終着秋

あなたに辿り着いたのは秋
次のわたしは冬から始まる
寒さに耐えられたら
咲けるかもしれない


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草食スマホ

スマートフォンで教養を
いつでもどこでもカンニング
学ばず知識は手に入る
知識は覚えるものじゃない
血肉にならない教養を
間食スマホはつまみ食い

スマートフォンで経験を
いつでもどこでもカンニング
無料で欲望満たされて
リアルな価値がわからない
欠けたままの感覚で
肉食スマホは好き嫌い

スマートフォンで心情を
いつでもどこでもカンニング
都合のいいとこコピーして
孤独や不安に貼り付けて
心の中は穴だらけ
草食スマホは痩せていく


|タイトル|

ウエストサイズストーリー

太りすぎて
ウエスト周りを気にしている
ボクもアナタも社会も地球も

あふれる物資を
自分の中に投げ込んでみても
消化しないことばかり
なのにどんどん食べている

痩せの大食いがいつか
痩せを大食いしていく
膨らんだウエストは
バブルなのかもしれないが
自分ではじける勇気はない
ウエストサイズストーリー

速すぎて
背中周りを気にしている
ボクもアナタも社会も地球も

あふれる情報を
ネットの中に投げ込んでみても
消化しないことばかり
なのにどんどん増えている

風邪に気が付かないバカが
風邪よりもバカをうつしていく
膨らんだウィルスは
煽るだけでも傷つけるのに
自分を恥ずる知性はない
ウェブサイトストーリー


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カレースプーン

カレーを食べようとしたら
スプーンに写った自分が
逆さまだった

スプーンをひっくり返したら
カレーは食べれないが
自分は逆さまではなくなった

食べるためには逆さまの自分に
納得しなくてはいけない時もある


|タイトル|

交通事故予報

さて、続いては交通事故予報です
土曜日の今日は各地で
羊の皮をかぶった狼のふりをした
狸なクルマが暴走するでしょう

朝方は土曜出勤で寝坊したクルマが
信号の変わり目で突っ込んでくるでしょう
昼は交差点での駐停車
峠道での無理な追い越しが見られるでしょう
夜は携帯電話の片手運転
火のついたタバコが投げ捨てられるでしょう

また、突然のゲリラ運転にもご注意ください
たかだかちょっと早いのを
自分の腕と勘違していたり
高級なクルマは無謀な運転が
許されると思っている
積乱雲が夕方には発生するでしょう
ゲリラ運転に遭遇したら
やり過ごすようにしましょう

くれぐれも
クルマは武器としては作られていません
狸なクルマにつられて
武器にしないようご注意ください

|タイトル|

手羽先をつまむ指先

「でも、サルとかクマも二本足で歩くわよ
 はいこれ、揚げ出し豆腐と生ビールね」
「あのね、ママ
 常時二足歩行ができるのは
 人類と鳥類だけらしいよ」
「あぁ、鳥ね、そうよね」
「同じ二足歩行で自由になった腕先を
 鳥は翼に選んで
 人は指を選んだんだね
 翼は飛ぶことしかできなかったけど
 指はテレビや飛行機を作った」
「そうよね
 指があるから、お料理もできるのよね」
「鳥は目的のための道具を選んで
 人は道具を作る道具を選んだってことかな
 人間社会でもこのどちらかを選ぶかで
 可能性が変わるしね」
「んー、よくわからないけど
 空を飛べないという欠点があったから
 人類はこれだけ発展してきたのよね
 欠点は可能性を生むということね」
「そうだね
 欠点のない人に可能性はないのかも」
「欠点ねぇ
 わたしも欠点だらけだったから
 頑張れたのかな
 はいこれ、手羽先のから揚げ」
「ありがとう
 あのね、ママ
 鳥が翼を選んだ一番の理由は
 飛べたら食べられないってことだったかもね
 なのに飛べない人に飼育されて
 から揚げになるとはね
 なんか自分みたい」


|タイトル|

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