1. チキンワーク
2. 雨にも勝てず
3. 雪化粧
4. 指相撲
5. 点滅人生
6. 退学願

あの人、鶏肉ばかり食べるのよ
安くて健康にいいからって言ってだけど
お酒飲んだ時に本音を言ったの
「本当は翼が欲しいんだ」って
「ニワトリは飛べないじゃない！」って
言ってやったのよ

そしたらね
「飛べない翼でもいいんだ」って
「はぁ？」ってもうね
「何カッコつけてんの！」って
そしたらね
「飛びたい訳じゃないけど
　諦めてる訳でもないと見せなくちゃ
　それがサラリーマンの生き方なんだ」って

あーあ
せっせと、飛ばないかもしれない卵を産む
それがサラリーマンなのかな

俺は情けない
遠く離れたお前と
携帯電話で話しができるのに
傘を忘れるとずぶ濡れだ

人間は進化しても
雨の中を誰かと歩くには
傘しかないのだ

クルマは進化しても
雨の中で早く走るには
ワイパーしかないのだ

でも俺は進化しても
誰かの傘には入らない
周りが見える速度で走る

俺は情けない
傘を忘れた時だけそう思う

薄く積もるから綺麗
かなり積もったら迷惑
雪も顔も同じだね

点灯して
何かを照らし続ける人生
自分に色はないけれど
誰かに認めてもらいたい

点滅して
何かを叫び続ける人生
自分に罪はないのだと
誰かに認めてもらいたい

「お父さん、そこは解って頂けませんか？」
「それじゃ、先生、やはり納得いきませんよ
　退学届けの用紙をください、ここで書いて出します」
「解りました、こちらです」

「ん？　退学願ではなくて、退学届が欲しいんですが？」
「願いと書いてありますが、これが退学届になります
　入学試験も願書を出すように、校長が退学を許可するんです」
「なるほど、でも、納得できなくって辞めるのに
　辞めさせて欲しいって書くのは、変でしょ？」
「まぁ、これは、学校の規則ですから」

「それじゃ、先生、退学願いということは
　退学を許可しないという事もあるんですよね？」
「いや、許可になりますから」
「それなら、願いを書く意味がないでしょう？
　”退学を許可しない、今後は学校側が努力する”
　という返事がもらえるなら解りますけど」
「いや、学校側はもう十分努力していますので」
「してないです」
「いや、しました」

「それじゃ、先生、こうしましょう
　退学理由に”学校側の努力不足”と書きますね」
「だめです”進路変更”と書いてください」
「えっ？　子どもは辞めて何かする訳じゃないですよ？」
「何もしないとういう進路に変えたことになります」
「何ですかそれ、書きますよ”学校側の努力不足”」

「あぁ、書いちゃった、それ受け取れませんよ」
「先生、これで校長が許可したら
　”学校側の努力不足”を認めたことになりますね」
「認めませんから、書き直してください！」
「認めないのなら
  退学させないということですから
　ちゃんと努力してくれるんですよね？」