63号 2012秋号の詩

  1. itoPhone
  2. 神在月(かみありづき)
  3. 素足
  4. 足踏みだけが人生だ
  5. 自由という不自由を感じる自由
  6. 自己評価交差点
作:イオン
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itoPhone

「こっ、これは
 ただの糸電話じゃないですか?」
「そう見えますが違います
 iPhoneは誰とでもつながりますが
 itoPhoneは一人としかつながりません」

「これね、糸一本だけでしょ
 携帯電話とは呼べないですよね?」
「iPhoneを持ち歩くには電気が必要ですが
 itoPhoneは要りません
 必要なのは持ち歩く勇気です」

「でも、いろんな所から
 連絡できなくては困るでしょう?」
「確かに、iPhoneは
 いろんな所からつながりますが
 itoPhoneは限られた場所だからこそ
 約束の重み、絆が違うのです」

「だけど今どき、インターネットに
 つながらないというのは、致命的ですよね」
「iPhoneは”ネット”につながりますが
 itoPhoneは”ずっと”につながります
 お客様も、携帯電話で探しているのは
 ”誰かとずっと”ではないのですか?」



|タイトル|

神在月(かみありづき)

旧暦の十月十日
島根の出雲大社に
日本全国の神様が集まって
目には見えない縁を結ぶらしい

そこで願い事をすると
全国の神様にお願いしたことになる
それはなんとも合理的

でも願いが叶わなかったら
全国の神様から見放されたことになる
それはなんとも悲劇的

でも一度で諦めがつくから
特急やくもに飛び乗るあたし
四十二歳独身


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素足

キミはハイヒールで魅力的
ボクはサンダルで楽観的

キミは美しさで自分を進め
ボクは気楽さで自分を進む

進み方は違うけど
同じ向きを向いているなら
素足にならないか

少し痛いけど一緒に歩きたい


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足踏みだけが人生だ

私が道路を歩いているはずだけど
私は同じ場所で足踏みしていて
道路が私を歩いているように感じる

私が世間を歩いているはずだけど
私は同じ場所で足踏みしていて
世間が私を歩いているように感じる

私が人生を歩いているはずだけど
私は同じ場所で足踏みしていて
人生が私を歩いているように感じる

ただ、足踏みだけの人生だ
いや、足踏みだけが人生だ


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自由という不自由を感じる自由

それなら
好きにしたらいいと言われた
好きにしたら知らないよと
言われたみたいで
不自由を感じた

だから
好きになんかできないと言ったら
後で賛成したと責められるからと
言われてしまって
不自由を感じた

そして
あなたなんて大嫌いと言ったら
嫌うのは自由だと
言われてしまって
不自由を感じた

なので
自由という不自由を感じると言ったら
反対しても同じだろと
言われてしまって
自由だったと気づいた


|タイトル|

自己評価交差点

自己評価が高すぎると
社会に迷惑をかける
自己評価が低すぎると
家族に迷惑をかける

自己評価が甘すぎると
未来に迷惑をかける
自己評価が辛すぎると
過剰に迷惑をかける

自己評価が無さすぎて
迷惑をかけないのも
迷惑と言われる

自己評価の交差点
しゃがみ込まれるのが
一番迷惑


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