57号 2011春号の詩

  1. 未縁社会
  2. 日にち薬あります
  3. セーター関係
  4. 胃酸化炭素
  5. 一人でイキル
  6. 遠い海辺
作:イオン
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未縁社会

繋がりのない無縁社会
決めつけるのはやめようよ
繋がり見えない未縁社会
先が見えんだけなんだ

まだまだ未縁、誰も会えん
まだまだ未縁、何も言えん
まだまだ未縁、辛さ絶えん

まだまだ未縁、欲しい支援
まだまだ未縁、何も買えん
まだまだ未縁、人と疎遠

まだまだ未縁、気持ち煮えん
まだまだ未縁、思い言えん
まだまだ未縁、希望増えん

まだまだ未縁、心燃えん
まだまだ未縁、怖い離縁
まだまだ未縁、亀裂縫えん

縁が恋しく憎くなる
縁が憎くて背を向ける
背を向けるから縁が見えん

繋がりのない無縁社会
決めつけるのはやめようよ
繋がり見えない未縁社会
先が見えんだけなんだ




|タイトル|

日にち薬あります

とても嫌なことがあって
気晴らしにいつもと違う道を帰ったら
入ったことのない調剤薬局に
「日にち薬あります」と貼紙があった

店内はごく普通の薬局で
職員が笑顔で声をかけてきた

「あの、外の日にち薬ってなんですか?」
「あぁ、あれ、心の薬ですね
 時間をかけて治す場合の手助けをするんです
 健康保険はききませんが
 あの、どこの先生から言われたのですか?」
「あっ、いや、その
 日にち薬って何かなぁと思って
 そんな飲み薬があるとは知らなくて」
「あぁ、飲み薬じゃないですよ、話す薬です」
「どういうことですか?」
「あのちょっと待ってください
 これ、案内のチラシです
 薬局の職員と電話したり
 会ったりして、毎日話しをします」
「あぁ、なるほど確かに
 日にちのかかる治療ねぇ」
「はい、毎日応援して
 長い治療を逆に楽しんでもらうことで
 早く治せる薬になっています」
「あぁ、解りました、ありがとう」

なるほどなぁ
興味を持った週末
チラシのクリニックに行ったが、医師は
「このぐらいでは日にち薬はいりませんね」
とあっさり診断を下した

そうなると、余計に気になって
もっとすごい事が来ないかなと思い
毎日の小さな事が苦にならなくなった

まてよ、これも日にち薬?


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セーター関係

セーターは
毛が暖かいのではなく
毛と毛の間に空気が溜まるから
暖かいのだ

人と人も間に距離をおいたほうが
暖まるのかな



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胃酸化炭素

喜びと活気がある職場の空気は
二酸化炭素でムンとする
厳しさだけの職場の空気は
胃酸化炭素でツンとする

人生のためのビジネスが
ビジネスのための
人生になっていれば
胃酸化炭素中毒で麻痺している





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一人でイキル

生きるために
胃を切るような思いをして
仕事をすることが生きることなのか

息切れても一人
胃を切っても一人
生き抜いても一人
一人でイキルは
一人で尽きる



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遠い海辺

大津波にのまれた
ニュースを見て
その惨状に胸を痛めながら
あいつこそ死ねばよかったのにと
思ってしまう私は
津波よりも自分が怖くて
海辺には住めない





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