 |
|
「何だって？ 半額になる前に あのバックを買ったのか？」 「ごめん、彼女の誕生日までに 値段が下がらなかったんだ」 「おい、半額マニアとしてのプライドは どこに行ったんだ？ 買い物上手で、二倍豊かな人生を送る それがオレ達の信条だろ」 「でもね、ボクは気が付いたんだ 半額で手に入れるまで 二倍待たなくてはいけないって 人生は短い、手に入れてから 楽しむ時間も半分なんだって わかってきたんだ」 「違う、オレ達はマニアだ 半額で手に入れて 差額で優越感に浸ることが目的だぜ」 「確かに、世の中の価値が半額だと 見定める快感はあるよ でもそれはね 自分の価値も半額だと どこかで思っていたからだと 彼女と出会ってから気が付いたんだ ねぇ、恋は半額じゃなくて 満額値引きなしで、したいじゃないか」 「わかったよ 今日は食べ放題半額の情報があるけれど キミはしばらく活動休止だな」 「あぁ、彼女の事で食事も喉を通らないし」 「そうか、でもね、恋は盲目って言うから 半分片目をつぶるくらいがいいぜ オレはまだ、半額マニアを続けるぜ」 |
思っている事と 違う事を話してしまう 考えていた事と 逆の事をしてしまう 意図しないことに 意図があるのは 心がドラマを求めているからだ |
朝の８時ダヨ全員就業！ 社長の前ダヨ全員人形！ お客の前ダヨ全員難行！ 夜の８時ダヨ全員残業！ 金曜８時ダヨ全員酒豪！ |
最終電車で帰ろうと思ったら 駅前で、酔っ払ったおやじが叫んでいた 「ふぅじゃけんなぁ、おれをよくみろょ かいしゃじじい！ でてきやがれ！ ひとりでねるよぉ、ゴミだもん」 フォークギターを持って歌っていた 二人組みの若者が、危険を感じて ギターをしまいかけたその時 おやじは、彼らに近づいて ギターホールを指差して 「ゆでタマゴ切ってみろ！」って叫んだんだ そのあと 私の大切なシンガーのフォークソングを おやじは歌いながら、駅前ロータリーへ歩き タクシーのボンネットにうつ伏せて 寝てしまったんだ ボンネットの熱で おやじの背中が、ひからびていく 大切なシンガーのポスターが 私の心の中で、めくれあがっていく おやじが道路に崩れ落ちたら ゆっくりとタクシーはバックして 走り去ったんだ なぜか、その後部座席には あの大切なシンガーが 乗っていたような気がしたんだ それが何だったのか 今は忘れているもんなぁ |
こちらは がんばっても 届かない ガンバレ難民 あちらは がんばりたくても がんばれない ガンバリ難民 そちらは がんばれないのに がんばれと言われる ガンバロ難民 その奥は がんばることが 大切だとは思えない ガンバル難民 その隣は がんばらないから 見返りを求めない ガンバラン難民 居酒屋が難民キャンプ |
先生、ボクはここを卒業したら 印税を稼げる詩人になりたいんです そうか、難しい相談だな いいかい、千円の本が百万部売れて一億円の印税だ 会社に四十年間勤めると生涯賃金は、だいたい二億円 それが、まぁまぁの暮らしかな それと同じ生活水準を保つためには 一生涯で二百万部を売らなくてはいけない事になる 先生、二百万部ですか うん、ベストセラー詩集二冊でいけますね おいおい、簡単に言うね まぁ、そのベストセラーが若いうちに出ればいいけどね ほら、電卓を叩いて延べにしてみようか 四十年で二百万部ということは 毎年五万部は売れないと、生活できないということになるぞ 先生、それじゃベストセラーが出るまで 五万部売れる詩集を、毎年出し続ければいいんですね まかしておいてください おい、あのな 詩の五万部というのは、大ベストセラーなんだよ いいかい、本というのは五千部売れてトントン 一万部は売れないと、みんなハッピーにはならない 純文学系の出版社が倒産の危機にある現実を 君も知っているだろう まぁ、なんとなく 先生、でも、詩の雑誌への掲載料とかで 食い繋いでいけばなんとかなるでしょう まぁね、そうだけど それじゃ仮に、一つの詩が売れて五千円としようか ひと月に三十万円稼ぐには、六十篇の詩を作らなくてはいけない それも、必ず掲載される詩を毎日二篇だ だけど、今の日本に詩の雑誌が十誌もあるだろうか 十誌あったとしてもみんな月刊誌だからね すべてに一篇づつ掲載されても十篇だから 稼げるのは、毎月五万円程度でしかない 先生、それじゃ、印税生活は無理ということですか？ そうだね、難しいね 現実から逃避したい人ほど、うまい詩が書けてしまうからね 詩で食べていけると思いがちなんだ でも、詩人という職業は 小説家や作詞家のように、職業名に「家」がつかないだろう だから家が建つほど儲からないと言われているんだ 先生、そんなことはありませんよ ユーモアでハッピーな詩なら 売れまくるんじゃないんですか？ んー、そうかもね じゃぁ是非、ベストセラー詩集二冊で 二百万部を目指してください あっ、先生、いまボクを突き放しましたね？ そんなことはないよ それでも詩人になって、スリリングな毎日を送りたいんだろう？ 人に甘えている場合じゃないってことだよ |
 |