31号 2004秋号の詩

  1. 動悸、息切れ、めまいも恋のうち
  2. 剥離紙
  3. コロの災難
  4. 残高商会
  5. 冷蔵庫
  6. トンネル曜日
作:イオン
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動悸、息切れ、めまいも恋のうち

恋のワクチンを作ろうだなんて、冗談じゃない
博士、いったい何を考えているんですか?

わしゃ、本気じゃ!

博士、確かに恋は人を苦しめ、狂わせもします
でも恋は、人を暖め、大人にもしてくれます
人間にとって、必要な病気でしょう?
その恋に、ワクチンなんて…

いるんじゃよ
恋に恋する若者や、恋に任せて
家庭を投げ出す者とかに
この太い注射でバンと、治してあげんとなぁ

しかし、症状があいまいですし
どうやってワクチンを?

それを研究するのが医学じゃ
さぁ、実験だ、まず、その娘に
わしを好きにさせるのじゃ


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剥離紙

キミはシールで
ボクはツルツルの剥離紙

キミはダレにでもくっつくけど
ボクはキミ以外にくっつかない

キミはダレかにつく度に痛むけど
ボクだけはキミを痛めない



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コロの災難

新聞のペット相談を読んでいた
「うちの番犬コロが最近
 夜中に唸るようになりました
 コロは何でも食べるのが自慢で
 今日もお昼にチョコレートとグミを
 喜んで食べました
 元気そうに見えるのですが」

回答者からは
「夜中の唸りは、腹痛です
 変な物を食べさせているからです
 コロはそんな毎日から抜け出すために
 早死にしたくて喜んで食べているのです
 お医者さんに急いで!」

課長が部長に自慢していた
「うちのメンバーには何でもやらせます
 給料を払っているんだから
 嫌とは言わせません」

ボクらも
毎日のノルマと残業から
抜け出すためには
たくさん仕事して
早死にするのが一番だと
どこかで
思っているのではないだろうか




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残高商会

探偵会社の看板の前で
立ち尽くしてしまった

 あなたの罪の残高おしえます
 あなたの命の残高おしえます
 あなたの夢の残高おしえます
 あなたへの愛の残高おしえます

投資を怠り
残高で生きるようになっていた自分が
底をついた瞬間だった



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冷蔵庫

僕が尋ねると
庫内はいつも明るい

僕が扉を閉めると
明りを消してしまう

僕も一人のときは
明るさを節約しなくちゃね



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トンネル曜日

暗い今日一日を
トンネル曜日と
暦のせいにしてしまおう

明日はただでも眩しいはずさ




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