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冬になってから毎朝彼女と この路地裏ですれ違う 心の中でそっとつぶやく 「おはようちゃん」 ボクとキミは出会っているのに 誰よりも毎日会ってるのに 知り合いではない おはようちゃん 今朝は雪だ キミの心にすべりこもうと思う 「ひと転びナオキといいます」 君はおはようと笑うだけでいい |
車を高速道路の上で直してください 船を海の上で直してください 飛行機を雲の上で直してください ワタシを仕事の上で直してください |
「我社の書類は、来週より全部 ネテマス試験紙を使うことになった」 「課長、あの、寝てるに等しい書類は 色が変るっていうやつですね そんなに厳しくなるんですか？」 「そうだ、無駄に紙を消費しない 生きた書類を作れる人間だけが この環境社会で生き残れるんだ」 「解りました、課長 うちの会社のパンフレットも その紙を使うんですかね？」 |
自分に対してついているウソを発見します 本当のことに気がつけます 心の奥を知ることができます 機械を逆転させれば ウソを本当にすることもできます ウソだろうって？ ホラ、今 機械を逆転しているところです |
「それじゃぁ」 ピッ こうして携帯電話を切った音が 電子レンジのできあがり音に 感じてしまうんだ 電磁波で脳ミソが温められて 毎日少しづつ 茹であがっていくような気がする はたして、携帯電話は 人間関係を簡単に加熱できる 機械なのだろうか もしかして 自分が熱いからこそ 冷えた人間関係が 美味しく感じているのかも |
東北新幹線下り 福島県に入ると 新白河駅手前右に デンオンの工場が見えて 郡山駅手前左に ダイヤトーンの工場が見えていた 学生時代に やっとの思いで手に入れた デンオンのレコードプレイヤー ダイヤトーンのスピーカー それなりに作り上げたボクの音響装置 デンオン共和国 アーティストの鼓動で レコード針が揺らぎ 心が掘り込まれていくのを感じていた ボクはレコード針で 削り込まれた気がする やがて共和国に彼女が入国し サウンドにうっとりしたのも束の間 子供が生まれると 共和国はミニカーの立体駐車場と化し やむなくボクもデンオンから針を降ろし 共和国は解散した 東北新幹線下り 新白河駅手前右の デンオンはデノンと名前を変え 郡山駅手前左の工場は ダイヤトーンの看板を降ろした ボクの音響装置は ポケットの中に入るほど小くなったが どこにでも持ち運べるようになった いずれボクも小さくなって 持ち運べるように 進化するのだろうかと 目を閉じた |
