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朝食 僕の前にめざしが横たわる めざしの前に僕は正座し 箸を取る （キミのめざしているものは何？） めざしが僕につぶやいた 「君こそ何をめざしていたんだ？」 僕は箸でつっつきながらめざしに問いかけた （今のボクはキミのお腹をめざしてる） 即座に答えためざしが羨ましい 「僕のめざしているものを知ってどうするの？」 （ボクのタンパク質がキミを動かすんだ 何をしたいのかを知る義務がある） 僕にはめざしているものなんてない しいて言うならば… 「めざすべきものを見つけることを めざしている」 僕は一気にそう答えると、めざしをほおばった 通いの電車の中で僕は めざしのように 誰かのタンパク質にはなりたくない 社会の中でなんか、消化されたくないと思った 僕の中でめざしが泳ぎだした |
あなたの態度が割り切れない あなたと組めば倍になる あなたを足して完成し あなたを引くと空になる 私の答えはなにひとつ 計算なしには得られない そんな自分を清算し 答えのいらない生活に たどり着くまで何年か 四則演算繰り返す |
ある日 私は、自分の影が 無くなっていることに気がついた ちょっと驚いたが 生活に支障がある訳でもないので 医者にも行かなかった ただ、誰かに 気がつかれるとまずいと思った だから、常に 何かの影に入るように生活をした すると、けっこう 影の無い人がいることに気がついて なんか、少しほっとした 私だけじゃないんだと思い 医者に行ったら 脈がありませんって言われた 私は、死んでいたらしい 医者は薬を出すと言った 死人に薬が効くのかと聞いたら 大丈夫、トドメを刺して 成仏できるからだって この薬 どうしようかなぁ |
あたし、福袋を見つけたの 店員が言うのよぉ 「あなたの大事な人が入っていますよ」 「そんなぁ、ウソー」 「タカユキさんが入っていますよ」 「えー、それ買います」 それでね、家に帰って開けたら 野球のボールとマジックが入っていたの 騙されたぁって、思いながらもね ボールにあなたの名前を書いて 胸に抱きしめたの あたしね、ふとんにボールを入れて いつも一緒に寝てたの ゴツゴツって、あなたの肩を感じてたの 二人で何かをしたいわけでもなく あたしが何か欲しいわけでもなく 福袋のような未来を想像しながら ただ、ふとんの中でゴツゴツできたらと だから、ボールのあなたでも 満たされてたの 時々思うの あの福袋に、本当にあなたが入ってたら ちょっと笑える |
「さて、今日はこちら貧乏亭のご紹介です こちらのメニューが不思議なんですよぉ ツナ缶ダイレクト、ヤサイだけ炒め、 マヨネ丼にマガリ丼とぉ、なんとまぁ 変わったメニューなんですがぁ、ご主人 どうしてこういうメニューなんですか？」 「はい、おいどんは昔、貧しくて マヨーネーズとかマーガリンを メシにかけて食べておったとです その気持ちを忘れたくなくて…」 「そうですか、だからこのような 変わったお店を始めたんですね？」 「はい、おいどんが逃れたかった食べ物で 商売しとるとは、因果なもんです」 「しかし、こんなものを 食べにくるお客さんがいらっしゃるんですかね」 「あんた、なんですと！ この美味しさが、解らん人は 出ってつかぁさい！ さぁさぁ！」 「そんなぁ、怒らなくても…」 「これは、人間の味ですばい 裸の人間の味ですばい！」 ガラガラ、ピシャ！ |
「お母さん、それじゃ出かけるね」 「サトコ、忘れ物はない？」 「うん、たぶん、大丈夫」 「初めての一人旅だから、心配よ」 「そのときは、あっちで買うから」 「そうね、お父さんみたいにね」 「お父さんがどうかしたの？」 「うん、お父さんがね、ハブラシ忘れて お母さんの働いていたお店に、買いにきたのよ」 「あれ、旅先でお母さんと 衝撃的に出会ったって言ってたけど、ハブラシ？」 「そう、ハブラシ」 「カッコ悪い」 「でもね、出会った頃、お父さんがよく言っていた 旅には、忘れ物を持って行くものなんだって」 「ふーん、なるほどね それじゃ、忘れ物も持ったし お母さん、行ってきます」 |
