01号室 1997春号の詩
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満員電車の箱の中 乗り合わせをした人々が 同じ揺らぎにリズム取る 日常けしてありえない 接近至近触れる距離 心と心はお互いに 果てない距離で離れてる だけどもゼロに限りなく 近い距離で揺れている 接近至近届く距離 見かけで惹かれた横顔を 想像力で補正して 自分好みに変えたうえ 一時だけの恋をする 接近至近想う距離 揺れる電車で今日もまた 触れる体に癒される 孤独な自分を詰め込んで リズムと恋で人間浴 接近至近触れる距離 |
外灯に縁取られたアパートを見て コインロッカーと同じだと思った 私は一人 箱の中で背伸びをして 明日に向けて保管される コインロッカーなら いつか誰かが取り出してくれる いつか箱の外で誰かと眠りたい |
目覚めると 今朝も私はまだ幼虫 布団さなぎに潜り込み 朝には蝶になっている そんな希望を畳み込み 今日も自分を這い回る |
「あなたのてのひらって すごく大きいの なんでも包んで 隠せてしまう みかんだって トマトだって いいえ、もっと大きいものだって ほら、 こうして私の瞳を包んで 地球を隠すことができるのよ」 （僕は自分のてのひらの未知数を恐れた） |
今朝も車ですれ違う 通勤途中の橋の上 いつもお互いガラス越し ガラスケースのすれ違い 彼女は何処に行くのやら 彼女はどこから来るのやら 毎日必ず出会うのに 知っているのはガラス越し 箱入り娘の上半身 袖擦る機会もないのなら 車で擦りあう事故起し 彼女の声を聞いてみたい 彼女とアドレス交わしたい 欲しいものはいつだって ガラスケースの箱の中 お金で買えないものならば ケース壊して手に入れたい 今朝も橋に差し掛かる ハンドル急に切りそうな 気持ちと戦い渡り出す 青いクーペが見えて来る 僕の視界が狭くなる |
街角に入場無料の動物園 コンビニエンスストアは 近所人間動物園 入園すれば人間の 今すぐしたいが見てとれる ＢＧＭに包まれて 手に取る本が商品が プライバシーを覗かせる よく見るあの人独身か？ 推理クイズに挑戦し 連れ添う相手の関係を 想像するもまた楽し エアコン電話にトイレ付き ちょっと飽きたら本もある 知ってる誰かに出会ったら 空いてた時間が埋まるかも 近所人間動物園 酒もタバコも売っている 時には恋さえ置いてある お客であればいつまでも 二十四時間居られるが 眠れる場所は置いてない 睡眠だけは売っていない 近所人間動物園 誰もがお客で訪れて 人間様を演じてる 誰も見てない時だって 監視カメラが生中継 近所人間動物園 二十四時間開園し 入場無料の動物園 |
