03号 1997秋号の詩

  1. 家族
  2. myconfig.sys
  3. 電線ギター
  4. 紙ひこうき
  5. 摩耗心
  6. 赤子の寝顔で電卓遊び
作:イオン
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家族

何日も雨が降らないのに
なぜ、草木が枯れないんだ?
そうか、朝露があったんだ

何年も愛されていないのに
なぜ、僕は枯れないんだ?
そうか、家族があったんだ



|タイトル|

myconfig.sys

    myconfig.sys                           マイ コンフィグシス(訳)

  DEVICE=C:\BODY\WAKEUP.SYS               目を覚ます
  DEVICE=C:\PRIVATE\PERSONAL.EXE          自分の情報を読込む
  BUFFERS=3                               3個の事柄の一時記憶場所を用意
  FILES=2                                 2個の事柄を同時処理
  DEVICE=C:\MEMORY\PLACE.SYS              寝ている場所を思い出す
  DEVICE=C:\PRIVATE\FAMILY.SYS            家族のことを思い出す
  PRIVATE=HIGH                            自分の事を特別な領域に確保
  DEVICE=C:\MEMORY\DREAM.BAT              ちょっと夢を思い出す
  DEVICE=C:\CALENDER\TIME.SYS /AMPM       時間を気にする(12時間計)
  DEVICE=C:\LOVE\MIYUKI.SYS /H            美幸のことを思う(元気になる)
  DEVICE=C:\PRIVATE\FRIEND.SYS            友達のことを思う
  rem DEVICE=C:\MEMORY\BAD.SYS /2YEAR     嫌な事は思い出さない(2年以上の)
  rem DEVICE=C:\LOVE\BROKEN.SYS /YOKO     失恋にも触れない(陽子についての)
  DEVICE=C:\MEMORY\PASTDAY.SYS            昨日までの記憶をおさらいする
  DEVICE=C:\MEMORY\TODAY.EXE              今日の実行計画を思い浮べる
  DEVICE=C:\WORD\JAPAN.SYS /S             日本語環境を読込む(オプション付)
  DEVICE=C:\WORD\TOHOKU.SYS               東北弁の環境を読込む
  DEVICE=C:\WORD\TOHOKU.DIC /FK       東北弁の福島版の辞書を読込む
  rem DEVICE=C:\WORD\TOKYO.SYS            東京弁は使わない
  DEVICE=C:\WORD\ENGLISHI\BROKEN.SYS    壊れかけている英語領域だが組み込む
  DEVICE=C:\WORK\M_DENKI.COM              仕事の情報を読込む(M電気)
  rem DEVICE=C:\WORK\Y_DENKI.COM          前の仕事を懐かしまない(Y電気)
  rem DEVICE=C:\SCHOOL\STUDY.SYS          学校で習ったことは使わない
  DEVICE=C:\BODY\MEGANE.SYS /MOVE         眼鏡をかける
  TOILET.EXE                              トイレに向かう



|タイトル|

電線ギター

君の家への交差点
部屋の灯かりに導かれ
電信柱によじのぼり
電線使って奏でよう
想いをのせたフレーズを
ビンビビビン

何万ボルトの情熱を
電線使って伝えたい
君の灯りへ届けたい

届いてしまえばこの僕は
感電ショックで落下する
受け取る君は僕を見て
情熱ショックで気絶する
同じ病院運ばれて
同じ朝を迎えたい

電線使って奏でよう
想いをこめたフレーズを
衝撃シーンのBGM
ビンビビビン



|タイトル|

紙ひこうき

紙ひこうきの行き先は
僕の手元を離れてから

自由に
緩く
飛んでいく
空へ向かって飛ばしたのに
僕の足下に墜ちてきた

そうだね
君は翼があっても
羽ばたくことを
知らないんだ



|タイトル|

摩耗心

あの人が体をすりよせる
その度心は摩耗していく
だけど体は擦り減らない
胸も口もなくなったりしない
だから求めを拒めない

あの職場で仕事をする
その度心は摩耗していく
だけど体は擦り減らない
指も目もなくなったりしない
だから職場は変わらない

自分自身に問い掛ける
その度心は摩耗していく
だけど体は擦り減らない
かかえた頭がなくなったりしない
だから誰も気に留めない



|タイトル|

赤子の寝顔で電卓遊び

赤子の寝顔に気を止めて
家計簿記載の手を止める

この子長くて八〇年
日にちで換算してみると
二九二〇〇日
財布の中をのぞき込み
二九二〇〇円
小銭紙幣で出しててみる

一円玉が一日分
十円玉で十日分
百円玉は三ヶ月
千円札だと約三年
一万円の紙切れが
二七年四ヶ月
一円玉の毎日で
この子はどんな生き方を
求め叶えていくのやら

毎日誰かと出会っても
二九二〇〇人
食事を楽しむ回数は
八七六〇〇回
そしてトイレの回数は
おおよそ二三万回
一日生活三千円
一年間で一一〇万
八〇年約九千万

勉強時間に仕事時間
通勤時間に旅の数
恋の数々キスの数
お酒の量に歌う数
それからティシュの数までも
電卓遊びで見えてくる
必要経費が押し寄せる

赤子の足が宙を掻く
そうか私の人生も
同じ計算式の中
電卓遊びの数の中




|タイトル|

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